実家はいつも静かだった。
父は単身赴任で、週末にしか帰ってこない。
母は祖父の家に介護で泊まり込むことが多くて、最近はほとんど家にいない。
だから18歳の私(遥)は、広い一軒家で実質ひとり暮らしのような生活を送っていた。
学校が終わって帰宅しても、誰もいない。
夕飯を作っても、誰も褒めてくれない。
夜になると、テレビの音だけが虚しく響く。そんな日々が続いていた。
そんなある時期から、姉の由美(ゆみ)とその夫・拓海(たくみ)さんが、よく実家に顔を出すようになった。
年が明けてすぐくらいからだと思う。
きっと母が「遥(はるか)のこと、ちょっと気にかけてあげてね」と由美に頼んだんだろう。
妊娠中の由美は体が重いし、拓海さんは三交代制の工場勤務で生活リズムがバラバラ。
それでも二人とも、私がひとりで寂しくないようにと、週に何度もご飯を一緒に食べるようになった。
拓海さんは25歳。穏やかで優しくて、いつも疲れた顔をしていても、笑うと目尻に優しい皺が寄る人だ。
私は昔から「お兄さん」と呼んで慕っていた。
由美が拓海さんと付き合い始めた頃から、何度も「こんなに優しい人、どこにいたの?」と心の中で姉に嫉妬したことさえある。
ある夜中、スマホが小さく振動した。
時刻は午前2時を少し回ったところ。
送信者は拓海さんだった。
『ごめん、遥。起きてるなら……何か軽く飯作ってもらえないかな?簡単なやつでいいから』
由美は妊娠中で、夜中に起こすのは忍びないらしくて、最近はこうやって私にSOSを出すことが増えていた。
私自身、夜更かし癖があることは拓海さんも知っている。
だからその日も、冷蔵庫に由美が用意しておいてくれた材料を使って、ふんわり卵の親子丼を作った。
湯気が立つ丼をテーブルに置きながら、なんだか胸が温かくなるのを感じていた。
数分後、玄関脇の車庫から車のエンジン音が聞こえてきた。
ドアが静かに開いて、拓海さんが疲れた足取りで入ってきた。
作業着の袖口が煤で黒ずみ、髪は汗で少し張り付いている。
それでも私を見ると、ほっとしたように小さく笑った。
「悪いな、こんな時間に……」
「ううん、全然。ちょうど起きてたし。お腹すいたでしょ?」
私はコーヒーを淹れて、二人でテーブルに向かい合った。
親子丼を頬張りながら、拓海さんは仕事の愚痴をぽつぽつこぼした。
夜勤明けの疲れが声にも顔にもにじんでいて、見ているだけで胸がきゅっと締め付けられた。
食事が終わると、私はふと思い立って言った。
「お兄さん、お風呂沸いてるよ。入ってちょっと休んでいったら?」
「……マジ? アパートの風呂、めっちゃ狭くて足伸ばせないんだよな……。悪いかな?」
「疲れた顔してるもん。ゆっくりしていってよ。もし私が寝ちゃってたら、勝手口から帰って大丈夫だから」
拓海さんは少し照れたように頷いて、「じゃあ……遠慮なく」と呟いた。
お風呂場へ向かう背中を見送りながら、私はタオルと拓海さん用に用意してあるお泊り用のTシャツとスウェットをリビングのソファに置いておいた。
こういうことは珍しくなくて、拓海さんは長風呂派。
私はそのまま自分の部屋に戻り、ベッドに潜り込んだ。
夜も深かったから、すぐに眠気が襲ってきた。
どれくらい時間が経っただろう。
上半身が妙に冷えて、ふと目が覚めた。
薄暗い部屋の中、ぼんやりとした視界に拓海さんの姿が映った。
あれ……?
頭が徐々にクリアになってくると、信じられない光景が広がっていた。
私のパジャマの前が完全に開いていて、胸が丸出しになっている。
拓海さんは眼鏡を外した素顔で、私の胸のすぐ近くに顔を寄せ、じっと……まるで舐めるように見つめていた。
吐息が乳首にかかるたび、ぞわっとした感覚が背筋を走る。
彼は私が目を覚ましたことに、まだ気づいていないようだった。
心臓がどくどくと鳴り始めた。
どうしよう。
拓海さんはいつも優しくて、いい人だ。
由美に嫉妬するくらい大好きだった人だ。
でも今、目の前で起こっていることは……。
頭の中でいろんな思いがぐるぐる回ったけど、結局、私は「寝たふり」を続けることにした。
いくら何でも、ここまでだと思う。
一線は越えないはず、と自分に言い聞かせて。
拓海さんはしばらく、私の胸をただ眺めていた。
乳首に温かい息がかかるたび、くすぐったさと恥ずかしさが混じって、体が勝手に震えそうになる。
我慢できなくなって、私は寝返りを打つふりをして、仰向けから横向きに体勢を変えた。
拓海さんは一瞬びくっとしたけど、私の規則正しい寝息を確かめると、ほっとしたように息を吐いた。
これで帰るかな……と、少しだけ安心した。
ところが、次の瞬間。
拓海さんは私の腰のあたりに顔を近づけ、ゆっくりと体を滑らせてきた。
向かい合うように横になり、そのまま頭を私の胸の方まで持ち上げて……。
結果、私の両腕の間に拓海さんの頭がすっぽり収まる形になった。
彼の頬が、柔らかい胸にぴったりと押しつけられる。
これは……まずい。
穏やかで優しい拓海さんが、こんな大胆なことをするなんて。
驚きも束の間、拓海さんの唇が乳首に触れた。
優しく、ゆっくりと……吸い始めた。
「あ……っ」
声が出そうになるのを必死に堪えた。
頭が真っ白になる。
気持ちよさが一気に押し寄せてきて、理性が一瞬で吹き飛んだ。
もう、起きてるのがバレそうなくらい心臓が暴れている。
息も荒くなってる。
拓海さんの行為は徐々に大胆になって、片手でもう片方の胸を優しく揉み始めた。
子供のようにはうように必死に吸う姿が、なんだか愛おしくて……おかしくなりそうだった。
足の間に、拓海さんの熱くなったものが当たっているのもわかる。
もう我慢できない。
勇気を振り絞って、私は小さな声で囁いた。
「ん……お兄さん?」
拓海さんの動きがぴたりと止まった。
ゆっくりと顔を上げて、私を見上げる。
「……あれ、起きてたのか」
少し慌てたような、でもどこか開き直ったような声。
上半身を起こして、こちらをじっと見つめてくる。
私は胸だけを手で隠して、横になったままだった。
「遥に……帰るよって声かけようと思ってさ。寝顔見てたら可愛くて、つい……手出しちゃった。みんなには内緒な」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが完全に切れた。
長い間胸だけを弄ばれて、理性なんてどこかに飛んでしまっていた。
「……ううん、いいよ。すごく気持ちよくて……その……」
「え? 気持ちよかった?」
拓海さんが小さく笑った。
目が少し細くなる、あの優しい笑顔。
「うん……。だから、もうちょっと……してて欲しいなって……ダメかな?」
恥ずかしくて顔をうつむけた。
最後の方はほとんど声になっていなかったと思う。
拓海さんは何も言わずに、再び私の横に体を横たえた。
背中に片手を回して、そっと抱き寄せてくれる。
温かい体温と、ほのかに石鹸の匂いがした。
「絶対、内緒にできる?」
耳元で囁かれた声に、私はただ頷くことしかできなかった。
拓海さんが、ふふっと小さく笑った気がした。
そこからは、もう記憶が曖昧になるほど、頭の中が熱でいっぱいだった。
拓海さんの唇が、私の唇に何度も重なる。
最初は優しく、探るように。
次第に深く、舌が絡み合うようなキスに変わっていった。
息が苦しくなるほど熱くて、でも離したくなくて、私は必死に彼の首に腕を回していた。
やがて拓海さんの顔がゆっくりと下へ降りていく。
首筋にキスを落とし、鎖骨をなぞり、そしてまた胸へ。
乳首を舌先で優しく転がされ、吸われ、軽く歯を立てられるたび、体がびくびくと跳ねる。
「遥の胸……本当にキレイだな」
そんな言葉を、吐息まじりに囁かれると、恥ずかしいのに嬉しくて、胸の奥がきゅうっと締め付けられた。
爪を拓海さんの肩に立てて、もっと強く抱きしめたい衝動を必死に抑えていた。
こんなに感じている自分が、信じられなかった。
拓海さんの手が、私の下着の縁にかかる。
布地の上から、ゆっくりと撫でるように触れてくる。
視線を上げて、私の目を見つめた。
「……いいかな?」
声が少し震えていた。
それがなんだか愛おしくて、私は頷くことしかできなかった。
「うん……お兄さんの好きにしていいよ。私、もうおかしくなりそう……」
「それじゃ、ちょっと味見させてよ」
拓海さんは小さく笑って、片方の足からだけ下着をゆっくり脱がせた。
太ももに引っかかったままの布地が、妙にいやらしく見えて、顔が熱くなった。
恥ずかしくて両手で顔を覆いそうになるけど、拓海さんは優しく私の手をどけて、顔を近づけてきた。
「あ……いや、ダメ……恥ずかしい……」
言葉だけが出て、抵抗らしい抵抗もできない。
拓海さんはそんな私の声を無視するように、熱くなったそこに顔を埋めた。
舌が優しく、でも確実に敏感な部分をなぞり、吸い、舐め上げる。
「凄いな……こんなに濡らして。実は最初から起きてたんじゃないの? いやらしいなぁ」
顔を埋めたまま、そんな意地悪な言葉を囁かれる。
私は何も言い返せなくて、ただ喘ぎ声だけが漏れ続けた。
ピチャピチャ、ぐちゅぐちゅ、という水音が部屋に響く。
自分の声が、こんなにいやらしく聞こえるなんて知らなかった。
(……実は、私にとってクンニは、この時が初めてだった)
「んー……なかなかイかないね。イカせたら帰ろうかと思ってたけど……仕方ないなぁ」
拓海さんは笑いながら、自分の服を脱ぎ始めた。
むっちりと肉のついた、男らしい体が露わになる。
お世辞にもスタイルがいいとは言えないのに、覆い被さってきた瞬間の安心感と重みが、誰にも代えがたいものに感じた。
私はすでに下半身は裸、上半身はパジャマがはだけたまま。
拓海さんは少し体を起こして、私の膝を優しく開いた。
セックス自体は経験があるのに、なぜか今は足を開くことに強い抵抗を感じてしまった。
恥ずかしくて、膝を閉じようとする。
「ん……入れるの、嫌かな?」
「そうじゃないけど……なんか、緊張しちゃって……」
「何言ってるんだよ。遥の十倍くらい俺の方が緊張してるよ……。あんまりオッサン扱いしないでくれよ」
拓海さんが苦笑いしながら言う。
その言葉に、少しだけ力が抜けた。
「からかってないよ……私も、お兄さんとしたくて、うずうずしてるの。ただ、由美お姉ちゃんのことが……」
「ここまでしちゃって、それはないだろ……。俺、もう我慢できないよ」
そう言いながら、拓海さんは自分のものを手に取り、私の入り口にぐちゅぐちゅと擦りつけてくる。
先端が当たるたび、熱いものが奥からせり上がってくる感覚に、体が震えた。
「あぁ……もう、入れてぇ……」
「あれ? お姉ちゃんのこと言ってなかった?」
意地悪く笑いながら、先っぽだけ入れては抜き、また擦りつける。
焦らされるのがたまらなくて、私は腰をくねらせて自分から沈めようとした。
「もう、いいから……お兄さん、お願い、お願い、入れて。我慢できないよぉ……」
「素直でいい子だな。ほら、これでいいのか?」
ぐぐっと、一気に奥まで入ってきた。
痺れるような快感に、背中が弓なりに反る。
拓海さんはゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
「遥……遥……」と、私の名前を何度も呼んでくれる。
その声に、姉の夫であるという罪悪感、背徳感、そして優越感が混じり合って、頭がおかしくなりそうだった。
彼氏とするのとは全然違う。
ゆっくりで、深くて、優しいのに、確実に奥を突いてくるセックス。
拓海さんは腰を動かしながら、乳首を舐めたり、胸を揉んだり、キスをくれたりした。
ふいに上半身を起こすと、拓海さんは入れたまま片手を私のクリトリスに伸ばした。
「そろそろ、俺も限界近いよ。遥も一緒に気持ちよくなって」
クリを軽く摘んだり、撫でたりしながら、腰の動きが激しくなる。
今までより深く、速く。
「ああ、お兄さん……凄くいいよぉ、気持ちいい……」
突然の激しさに、私のアソコがヒクヒクと痙攣し始めた。
生の感触が、さらに興奮を煽る。
「ほら、早くイかないと……遥の中に、出しちゃうよ。出ちゃう……ああ……」
中出しという言葉に、なぜか体が熱くなった。
我を忘れて、私は叫ぶように言った。
「ああ、お兄さん……中に出しちゃってぇ。もうダメ、いきそうっ……お兄さぁんっ!」
腰がガクガク震える。
拓海さんも極限まで興奮していたのか、私がイクのと同時に、熱いものが奥深くで脈打つように射精された。
膨張した感触が、手に取るように伝わってくる。
一息ついて、冷静になると……自分のしたことの恐ろしさが一気に押し寄せてきた。
拓海さんも同じだったらしく、しばらく二人とも無言だった。
「……中に出しちゃったなぁ。さすがにマズいよな。遥、次の生理予定日いつ?」
「えっと……いつも月始めだから、そろそろだよ」
「あー、そうか。それじゃセーフ……かな。とにかく、生理来ることを祈ろう。ごめんな、こんなことしちゃって」
「ううん、私もごめんね。でも……凄く気持ちよかった。お兄さん、大好きだよ」
そう言って、拓海さんの腕にしがみついて俯いた。
そんな私の肩を掴んで、拓海さんはぎゅっと強く抱きしめてくれた。
「俺も遥が好きだ。でも、あいつのことも大切なんだ。ずるくてごめん……」
「ううん、私もお姉ちゃんが悲しむの見たくないし。時々、こうしてくれるだけでいいんだ」
そして、明け方まで拓海さんは私のそばにいてくれた。
温かい体温と、静かな寝息が、なんだかとても切なくて、愛おしかった。
それからというもの、先月末からこの関係が続いている。
生理は予定通り来た(少しホッとしたような、寂しいような)。
今では中出しはしていないし、拓海さんが夕勤の日は、必ずと言っていいほど私のところへ来てくれる。
姉に対する罪悪感は、毎日胸を締め付ける。
でも、それ以上に拓海さんが好きでたまらない。
三人でいるとき、由美お姉ちゃんに触れる拓海さんを見るだけで、嫉妬で胸が張り裂けそうになる。
どう頑張っても、私は奥さんじゃない。
私にもまだ彼氏がいるし、拓海さんもそれを知っている。
だからこそ、この危うい関係を、うまく続けられているのかもしれない。
ただ……いつかバレてしまうんじゃないか。
それだけが、怖くてたまらない。


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