俺は一浪して、なんとか都内のそこそこ名の知れた私立大学に入学した。
実家は東北の田舎町で、高校時代は周りもみんな地元の進学校か、就職組ばかり。
都会の大学なんて、テレビやネットでしか見たことなかったから、入った瞬間から完全に浮いていた。
キャンパスにいる女子たちのファッション、話し方、持ち物のセンス……全部が別世界すぎて、俺みたいな田舎丸出しの男は、ただ歩いているだけで申し訳ない気分になった。
そんな俺が、入学して間もない頃に知り合ったのが、同じ東北出身で一つ上の先輩・佐伯さんだった。
佐伯さんは明るくて面倒見がよくて、「お前みたいな後輩、放っておけないわ」って笑いながら、
「うちの合唱サークル、来ない?」と誘ってくれた。
合唱なんて、中学の音楽の授業で「大地讃頌」とか歌わされた記憶しかない。
でも、先輩に「来いよ」って言われたら断れなくて、半ば勢いで入部した。
そこで出会ったのが、真美(まみ)だった。
授業が始まって一週間くらい経った頃。
まだ友達もほとんどできず、俺はいつものように教室の隅っこで一人、教科書を眺めながら時間を潰していた。
すると、後ろのドアが開く音がして、柔らかい声が聞こえた。
「ねえ、もしかして……綾瀬(あやせ)くん?」
振り向いた瞬間、心臓が喉まで跳ね上がった。
そこに立っていたのは、サークルで何度か見かけた真美だった。
「え、えっと……はい、そうですけど……」
「やっぱり! 私、真美だよ。同じサークルの。覚えててくれた?」
「覚えてる、覚えてます! あの……よろしく、です……」
俺、完全にテンパっていた。
それまで女子とろくに話したこともない。
ましてや、こんなに可愛い子から名前を呼ばれたことなんて一度もなかった。
「隣、空いてる? 座っていい?」
「ど、どうぞ! どうぞどうぞ!」
真美はにこっと笑って、俺の隣にカバンを置いた。
その瞬間、ふわっと甘いシャンプーの香りが漂ってきて、俺の頭はもう真っ白。
しかも、座った真美の胸元が……もう、目に入らないわけがない。
155センチくらいの小柄な体型なのに、制服の上からでもはっきりわかる、信じられないくらいの巨乳。
色白で、ちょっとふっくらした頬。
でもそのふっくら感が、むしろ柔らかくて優しい雰囲気を作っていて、
俺はもう「こんな子が隣にいるなんて現実か?」って何度も自分を疑った。
真美は本当に明るくて、話すのも聞き上手で、すぐに打ち解けてくれた。
父親は誰もが知ってる大企業の役員で、実家は山手線沿いのタワーマンション。
高校は超お嬢様校として有名なあの学校。
服もいつも清楚で上品なのに、どこか自然体で、気取ってない。
そんな完璧な子が、俺みたいな冴えない田舎者に気さくに話しかけてくれるなんて、夢みたいだった。
もちろん、すぐに好きになった。
真美が自分の携帯番号を「何かあったら連絡してね」って教えてくれたときは、
アパートに帰ってから一人で布団に顔を埋めて「うおおおおお!!」って叫びながら暴れた。
でも、同時に現実もよくわかっていた。
俺は金もない、センスもない、女の子と付き合った経験なんてゼロ。
真美みたいな子と付き合うなんて、完全に非現実的。
せめて、毎日授業で隣に座って、軽く話ができるだけで十分幸せだ……そう思ってた。
でも、そんな幸せな日々は、2年生の春までしか続かなかった。
サークルの中では、真美のことはみんなの憧れの的だった。
特に男連中は、真美がいないところで、
「あの胸、マジでやばいよな」「今日のブラ、何色だった?」「谷間見えた瞬間死んだわ」
とか、くだらない話でやたら盛り上がっていた。
俺も、もちろんその輪の中にいた。
授業中に真美が前屈みになったときに見えたブラのレースとか、
ローライズのジーンズからチラッと見える淡いピンクのパンツのラインとか……
全部、脳裏に焼き付けて、夜に一人で思い出しては、罪悪感と興奮でぐちゃぐちゃになっていた。
夏のある日、真美がキャミソールに薄いカーディガンを羽織って来たとき。
前でボタンを留めても、どうしても隠しきれなくて、白い肌の深い谷間がくっきり。
悪いなと思いながらも、あの夜は家で何度も抜いてしまった。
そして、1年の終わり頃から、真美の様子が変わった。
同じサークルの同級生・悠真(ゆうま)とやたら一緒にいるようになったのだ。
悠真は長身で、整った顔立ち、クールな雰囲気。
入学早々から女の子に囲まれていて、俺なんかとは住む世界が違う男。
噂では、高校時代からモテまくってて、大学でもすぐ彼女ができては乗り換えを繰り返してるって話だった。
俺には関係ない世界だと思ってたのに……。
2年生になったある日の授業。
いつものように真美が隣に座ってきて、少しもじもじしながら、
「……あのね、綾瀬くん。私、悠真くんと付き合い始めたの」
「……へえ、そうなんだ」
平静を装ったけど、心臓がバクバク鳴ってた。
真美は照れくさそうに笑って、
「なんか、わかってた感じ? 恥ずかしいな……」
「悠真くんってほんとカッコいいよね。頭もいいし、優しいし……最高」
俺は笑顔を作って「あはは、そうだね」と返すのが精一杯だった。
その日の夜、アパートに帰ってから、記憶が飛ぶまで酒を飲んで、泣きながら布団に突っ伏した。
次の日から、大学に行くのもサークルに行くのも苦痛でしかなかった。
真美の笑顔は変わらないのに、その笑顔が俺の胸を抉る。
見るだけで息が詰まるような感覚だった。
そして、ゴールデンウィーク明けの飲み会。
男ばかりの、いつもの下衆な集まり。
悠真は当然来ない。
そこで、悠真と仲の良かった同級生の博司(ひろし)が、酔っ払ってぽろっと漏らした。
「そういやさ、悠真の奴……真美と、もうヤッたらしいぜ」
その瞬間、胃がひっくり返った。
トイレに駆け込んで、吐きながら頭の中がぐちゃぐちゃになった。
聞きたいのか、聞きたくないのか、自分でもわからなかった。
でも、もう逃げられないと思った。
腹を括って席に戻った。
博司は興奮気味に話し続けた。
真美は悠真が初めての彼氏だったこと。
キスまで1ヶ月かかったこと。
そして、4月末のある日、真美の家に誰もいなくなったタイミングで、
「ご飯作ってあげるね」と誘ったこと。
悠真はもちろんゴムを準備して行ったらしい。
真美の肌は本当に柔らかくて、全身がマシュマロみたいだったとか。
色白で、きめ細かくて、触るたびに「すげぇ……」って声が出たとか。
ベッドはでかくて、悠真も内心「今日ここで真美の初めてを奪う」って燃えてたらしい。
胸は想像以上で、腕を挟んでパイズリできるレベル。
乳輪は大きくて色は薄いピンク。
悠真は夢中で揉んで、吸って、舐めて……。
真美は最初、フェラもクンニも頑なに拒否したらしいけど、指は入れてくれた。
「濡れてないと痛いからね?」って悠真が言いながら中をかき回すと、
真美は初めて「あ……っ」と声を漏らしたそうだ。
陰毛は濃くて逆三角形で、ビキニみたいにくっきり。
挿入の瞬間、真美は「入らない……絶対無理……」と怯えて泣いた。
でも悠真は優しく「みんな入るから大丈夫」って言い聞かせて、
最初は痛がって泣きながらも、少しずつ慣らしていった。
正常位からバックに変えて、真美を鏡の方にさせて、苦悶の表情を見ながら挿入したらしい。
最後はまた正常位に戻して、密着しながらゆっくり動いて……。
博司の話は、まだまだ続いていた。
俺はただ黙って聞いてた。
胸の中が、焼けるような痛みと、変な熱でいっぱいだった。
結局、真美の痛みが最後まで引かなくて、悠真は中で果てることはできなかった。
代わりに、自分で激しく扱いて、真美の柔らかいお腹の上に勢いよく白い液体を放ったらしい。
真美は、生物学的な知識では「精子は子孫を残すためのもの」って理解してるはずなのに、
目の前で男の硬くなったものが脈打って、熱いネバネバしたものが飛び散る光景なんて想像もしてなかったんだと。
驚きと戸惑いで目を見開いて、息を飲んで固まっていたそうだ。
悠真の方は、そんな真美の反応を見て「中で出すより、こっちの方がずっと興奮した」って内心満足げだったらしい。
こうして、真美は処女を失った。
俺はその話を聞いてからというもの、胸の奥がどす黒く淀むような陰鬱な気分に苛まれながらも、頭の中では悠真に抱かれる真美の姿を勝手に想像して、何度も何度も興奮してしまった。
ベッドの上で一人、真美の柔らかい肌、怯えた表情、漏れる小さな声……
そんな妄想を繰り返すたび、罪悪感と背徳感が混じり合って、余計に激しく自分を慰めてしまう日々が続いた。
それから少し後日譚になるけど、真美はあの日以来も、俺に対して何も変わらず普通に接してくれた。
授業で隣に座って「今日も眠いね~」って笑ったり、サークルで軽く挨拶したり。
でも俺の中では「ああ、これがもう大人になった真美なんだ」って思うだけで、鬱屈した興奮が込み上げてきて、毎回下半身が反応してしまう始末だった。
前期の期末テストが終わって、夏休みに入る頃。
サークルで前期の打ち上げ飲み会が開かれた。
その日、問題児の先輩・東田(ひがしで)さんが完全に解き放たれてしまっていた。
普段は酒癖の悪さで有名で、誰かが必ず隣に張り付いて監視してたんだけど、その監視役の先輩が卒業してしまって、東田さんは「自由だぜぇ!」って感じで酒を浴びるように飲んでいた。
案の定、真美の隣に陣取って絡み始めた。
「なぁ、高本真美さんよぉ……悠真とヤッたんだってぇ?」
「な、何のことですか……?」
「だからぁ、セックスしたんだろぉ?」
「し、知りません、そんな……」
「自分でエッチしたことも知らねぇのかよぉ? あははは!」
「もう、やめてください……!」
真美の声がだんだん震えてきて、顔が強張っていく。
俺は東田の斜め後ろの席にいた。
普段は真美を妄想のネタに使ってる自分が怒る資格なんてないってわかってるのに、酒の勢いもあって、頭に血が上った。
でも、いきなり殴りかかったら真美がもっと怖がるだけだ。
だから、俺は立ち上がって二人の間に割って入った。
「東田さん! 酒、まだ足りないっすね! 俺が注ぎますよ!」
「んだよ、てめぇ……俺は今、高本と話してんだよ!」
「いやいや、俺、東田さんと飲みてぇっすよ! ほらほら!」
「うっせぇんだよ、どけよ……」
俺が笑顔でしつこく絡み続けていると、突然、ガツン! という鈍い衝撃が頭を襲った。
東田が中身の入ったままのジョッキを全力で俺の頭に叩きつけたんだ。
ビールが飛び散って、真美の服にもかかって、真美はショックで顔面蒼白になって震えていたらしい。
俺はその場で意識を失った。
後で聞いた話だけど、救急車で運ばれて、診断は「脳震盪」だけ。命に別状はなく、翌朝には退院。
病院に東田とその両親が謝りに来てたのは、ちょっと笑えた。
東田はもう内定決まってる身で、警察沙汰は絶対避けたかったらしい。
最初は「絶対届け出る」って意地張ってた俺だけど、東田の母親が持ってきた封筒に「金十万」って書いてあるのを見た瞬間、手が勝手に伸びてた。
「治療費は別ですよ」って言いながら、封筒をひったくってやった。
この事件の後、俺はしばらくサークルに行かなくなった。
授業で真美と顔を合わせても、ぎこちない挨拶だけ。
2年の冬頃にようやくサークルに顔を出したら、真美はもうとっくに辞めていて、悠真ともあの事件がきっかけで急速に冷え切って別れたって聞いた。
3年生になると専攻が別れて、真美とはほとんど会わなくなった。
俺もついに彼女ができて、22歳にして童貞卒業。
4年生で就職氷河期真っ只中だったけど、なんとか内定もらって、そして卒業。
卒業パーティーの夜。
黒いドレスを着た真美を見た瞬間、息が止まった。
もう完全に大人の女性。
清楚なのに色気があって、胸元が少し開いたドレスが、昔の記憶を一気に蘇らせた。
パーティーも終わって、数少ない友人たちと二次会に向かおうと歩き出したとき、後ろから「綾瀬くん!」って声がした。
振り向くと、真美が小走りで近づいてくる。
友人たちに「先行ってて。後で電話するから」って言って、真美の元へ。
心臓がうるさく鳴り始めた。
「もう、卒業だね……早いよね」
「そうだな。田舎から出てきたの、昨日みたいな気がするよ」
「綾瀬くんも、すっごく変わったよね」
「まあ、4年も経てばな。こっちで働くし」
少し沈黙があって、真美が小さな声で続けた。
「……あのね。あの時、助けてくれてありがとう。私、お礼もちゃんと言えなくて……」
「あの時?」
「ほら、2年の時、東田さんが……」
「ああ、あれか……あはは」
俺の中では、あの出来事は自分が情けないところを見せて、真美に迷惑かけた記憶だった。
でも、後で聞いた話だと、あの時俺が助けに入らなかったら、真美は悠真に「なんで助けてくれないの?」って怒って、そこから二人の関係が一気に冷えていったらしい。
「すごく、嬉しかったんだよ……私」
「いや、俺、ただ殴られて倒れただけだし……」
その瞬間、真美がすっと近づいてきて、俺の首に腕を回して、背伸びをして、唇を重ねてきた。
心臓が口から飛び出しそうだった。
どれくらいの時間だったかも、どんな感触だったかも、ほとんど覚えてない。
ただ、真美の甘い匂いが、すごく近くて、頭がクラクラしたことだけは鮮明に覚えてる。
真美はそっと離れると、うつむきながら
「……スーツ、かっこいいね」
って呟いて、
「さよなら!」
と言って、くるっと踵を返して走り去っていった。
俺は呆然と立ち尽くしたままだった。
後で友人たちに話したら、
「それ、お持ち帰りだろ!! バカヤロー!!」って総ツッコミされた。
……だよな。
でも、その頃には彼女がいて、その彼女とそのまま結婚した。
だから、俺は一生、たった一人の女としか経験がない。
性格的にも浮気なんてできないし。
真美とは、それ以来会ってない。
年に何度か、メールで近況報告くらいはするけど。
今も、悠真以降、彼氏はいないらしい。
ちなみに悠真は、真美と別れた後、1年の後輩(処女)と付き合って、3年で新入生(処女)と付き合って、4年でもまた新入生(処女)と付き合って、サークル内で合計5人と付き合ったらしい。
うち4人が処女で、みんなそこそこ可愛い子たち。
……なんとも、羨ましい限りだ。
ということで、これでおしまい。

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