私はずっと前から、友人のFがうちの妻を狙っていることに気づいていた。
28歳の妻は、見た目も性格も穏やかで、誰が見ても「いい奥さん」だと褒められるタイプだ。
だからこそ、Fのような男が放っておくはずがないとも思っていた。
それでも、まさか本当に手を出されるとは……心のどこかで「そこまではしないだろう」と甘く見ていた自分が情けなかった。
お盆休み、私は実家に帰省していた。
妻は仕事の都合で東京に残り、一人で留守番をすることになった。
そんなある日の夕方、妻から電話がかかってきた。
声のトーンが明らかに苛立っている。
「ねえ、昨日さ、Fさんが急に家に来たのよ。あなたがいないって言ってるのに、玄関で『ちょっと上がらせてよ』って強引に靴を脱ごうとするの。
態度がもう最悪。感じ悪いし、デリカシーなさすぎ。ああいう男、本当に大嫌い!」
私は「そりゃそうだよな」と相槌を打ちながらも、胸の奥がざわついた。
Fのあの図々しさは昔から知っている。
でも妻がそこまで嫌悪感をむき出しにするなんて珍しい。
「気をつけろよ」と軽く言って電話を切ったが、その言葉が妙に頭に残った。
帰省から戻ったのは盆休み最終日。
久しぶりに地元の友人たちが集まり、いつもの居酒屋で飲み明かした。
深夜近く、Kが「ちょっと外で話がある」と私を店の裏口に連れ出した。
そして、煙草に火をつけながら、ためらいがちに口を開いた。
「お前には……言いにくいんだけどさ。昨日、Fに誘われて軽く飲んだんだよ。そしたらあいつ、酔った勢いでぽろっと言いやがった。
『お前の奥さんとやった』って。最初は嫌がってたらしいけど、最後は『好き者でヒーヒー言わせてやった』とか自慢げに話してたんだぜ。
事実かどうかはわかんねえけど……気をつけろよ。Fって、結構人妻に手を出してるって噂あるし。
しかも『俺のチンポ、一回味わったら人妻はもう離れられねえ』とか本気で言ってるらしいからな……でかいらしいぜ」
その瞬間、頭の中に血が上るような感覚と、逆に冷や汗が背中を伝う感覚が同時に襲ってきた。
妻のあの電話。
「感じ悪い」「大嫌い」と言っていた声。
でも……もし、あのあと何かあったとしたら?
翌日、私は妻にどう切り出せばいいのかわからず、朝からずっと頭を抱えていた。
Fの話が全部嘘だったら、妻を疑った自分が最低になる。
でももし本当だったら……考えるだけで胸が潰れそうだった。
結局、夕食の後、何気ないふりをして聞いてみた。
「そういえばさ、あれからF来なかった?」
妻は少し間を置いて、普通の声で答えた。
「うん、来たよ。あの次の日、夜遅くに『昨日はすみませんでした』ってケーキ持ってきてくれたの。
最初は感じ悪いと思ってたけど、話してみたら意外と面白い人でさ。私、つい笑っちゃった」
その言葉に、胃がキリキリと締め付けられるような痛みが走った。
「面白い人」……?
昨日まで「大嫌い」と言っていたはずなのに。
その夜、私はFを呼び出した。
待ち合わせたファミレスの喫煙席。
Fはニヤニヤしながら現れ、最初から何を言われるか分かっているような顔をしていた。
「お前、俺が何で呼んだか分かってんだろ?」
Fは肩をすくめて、ため息混じりに言った。
「悪かったよ。別に悪気はなかったんだけど……話が盛り上がっちゃって、気づいたら夜遅くなってさ。
奥さんが『電車ないなら泊まっていいよ』って言うから……」
「電車がなくなったからって、友達の家に泊まって、その友達の女房食ってもいいってか!?」
「だから悪かったって言ってるだろ。でもよ、セックスは同意の上だぜ?
同意してなきゃ、朝まで3回も4回も続けられるわけねえだろ。唯ちゃんも『中に出していいよ』って言ってくれたんだぜ。
それって完全に同意だろ?」
次の瞬間、私はFの頬を思い切り殴っていた。
拳が当たった感触が、まだ手に残っている。
「やったもんは返せねえけどよ……ぺらぺら他人に言いふらすんじゃねえ。次やったら本当にぶっ殺すぞ」
Fは頬を押さえながら、薄く笑っただけだった。
家に帰ると、妻はいつも通りの笑顔で迎えてくれた。
何も知らないような、何もなかったような……その自然さが逆に怖かった。
その夜、妻を抱いた。
頭の中は嫉妬と怒りと、言いようのない興奮でぐちゃぐちゃだった。
何度果てても、またすぐに硬くなる。
妻は驚きながらも嬉しそうに笑った。
「あなた、今日はすごいわね……昨日の焼肉が効いたのかな? 絶倫みたい」
「お前、Fとやっただろ」
喉元まで出かかった言葉を、必死で飲み込んだ。
言ったら終わりだと思った。
言ったら、もうこの関係が壊れる気がした。
妻が喘ぎながら身体をくねらせ、爪を私の背中に立てる。
シーツを握りしめ、声を殺しながら達する。
その姿を見ていると、どうしても考えてしまう。
Fも同じように、この身体を抱いた。
この腰を掴んで、この首筋にキスをして、この奥深くに……
妻はFの名前を呼んだのだろうか。
Fのものを咥えて、綺麗にしたのだろうか。
Fの精液を、どんな気持ちで受け止めたのだろう。
二度目の射精を妻の中に放ちながら、私は狂おしいほどに妻を抱きしめた。
終わった後、妻は私の胸に顔を埋めて小さく呟いた。
「大好きだよ……」
その言葉が、逆に胸を抉った。
そしてとうとう、翌日の夜、妻を問い詰めた。
妻は少しの間目を伏せていたが、やがて顔を上げて言った。
「許すの? 許さないの?」
「お前……開き直るのかよ?」
「だって、結局そこに行き着く話でしょ?」
「許せなかったら、こんなふうに話もしてねえよ。それより……俺に対する裏切りなのか? それともただの遊びだったのか?」
妻はしばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと私の胸に抱きついてきた。
「ごめん。言い方、生意気だったよね。別れる気なんて全然ないよ。あなたのことは本当に大好きだから……」
「じゃあ、どうしてFと……?」
「魔が差したの。あのとき『この人、私とやりたいんだ』ってはっきり感じたら、なんか……変なスイッチが入っちゃって。自分でもびっくりするくらい」
「俺のことは、そのとき頭になかったのかよ?」
「……ごめんなさい。許して」
私はもう何も言えなかった。
ただ、狂ったように妻を抱いた。
少年の頃のように痛いほど硬くなったもので、妻の奥を突き上げた。
妻は喘ぎ、のけぞり、涙を浮かべて私の名前を呼んだ。
でも頭の中では、ずっと同じ映像が繰り返されていた。
この姿を、Fも見た。
この喘ぎ声を、Fも聞いた。
この身体の奥に、Fの精液が注がれた。
そのことを思い出すたび、嫉妬と怒りと、そして言いようのない熱が下半身に集まる。
私は妻を抱きながら、自分が壊れていくのを感じていた。
シャワーの音がバスルームに響く中、妻は私のものを丁寧に洗いながら、ぽつりぽつりと、まるで昔話を語るような口調で話し始めた。
「私ね、あなたがインターネットで『自分の奥さんが他の男に抱かれる』みたいなホームページを見てるの、ずっと前から知ってたのよ」
私は一瞬、手の動きを止めた。
妻は泡だらけの指で優しく包み込みながら、目を合わせずに続けた。
「最初はショックだった。『私、愛されてないのかな』って思った。でも……私も何度か覗いてるうちに、だんだんわかってきたの。
あなたにとっては、そういう妄想こそが『愛の形』の一つなんだって。女だって、色々な願望があるのよ。他の人に抱かれるって想像した瞬間、最初は本当に気持ち悪くて、吐きそうなくらい嫌だった。
でも、あなたがそれを思い浮かべて、ひとりで硬くして、オナニーしてる姿を想像したら……なんか、すごく変な気分になったの。
ゾクゾクするっていうか、熱くなるっていうか……」
「他の男としてみたいって思ったのか?」
妻は少しの間、シャワーの水音に紛れるように息を吐いた。
「……正直に言うと、そうね。
若い頃はね、『この人、私のこと狙ってる』って気づいた瞬間、拒否反応がすごくて、危ないって本能的に逃げてた。
でも、結婚して、何年も経って、『もう他の人とすることは絶対ない』って現実がはっきりした頃から……
逆に、迫ってくる男に対して、妙な想像が働くようになったの。
『この人、今、私の中に自分のものを入れたいって思ってるんだ』
『この人にやられて、奥の奥まで突かれて、最後に熱いものをドクドク出されたら、どうなるんだろう』
って考えるだけで、身体が疼いて、悶々としてくるの」
「何度か……やったことあるのか?」
妻は私の胸に顔を寄せて、小さく頷いた。
「前に、一度だけ」
「いつ? 誰と?」
「K子のところに遊びに行ったって言った日……
本当はK子の家じゃなくて、ホテルに泊まってたの」
「誰と?」
「元カレ……っていうか、昔は何もなかった人。
K子たちと飲んだ夜に、たまたま来てて。
解散したあと、二人で二次会みたいに飲みに行って……」
「前からやりたかったんだろ?」
「付き合うはずだったのよ。でも、あなたと付き合い始めたから……結局、何もなかった」
「浮気者だなお前って」
妻はくすっと笑って、私の首に腕を回した。
「あなたが、そういう願望とか妄想を持ってるって知ったからよ。
こういう話を聞くと、興奮するんでしょ?」
「妄想と現実は違うだろ」
「だって……」
「一つだけ教えてくれよ。最初から、やる気満々で行ったのか?」
「そんなはずないでしょ。相手がその気ないのに、できるわけないじゃん」
「でも、願望はあったんだろ?」
「……その人が来ることなんて、知らなかったのよ」
「でも、可能性はあるって思ってたんだろ?」
「そりゃ……なくはなかったけど」
「だから、一人でホテル取ったんだろ?」
妻は少し困ったように笑って、首を振った。
「うーん、少し違うかな。アバンチュールの期待……みたいな?
でも、そんなのあてにならないし。
あなたと付き合い始めた頃なんて、何回期待を裏切られたか知らないでしょ!」
私は苦笑いしながら、妻の腰を抱き寄せた。
「で、何回したんだよ」
「あらあら、いきなり本題ね」
「飲みながら、『今日はやろう』って話したのか?」
「そんなんじゃないよ。それじゃただのホテルじゃん。ムードよ、ムード」
「ロマンチックにエッチしたのか?明かり真っ暗にして、優しく抱いて、みたいな?」
「絶対教えない!」
「言えよ」
妻は悪戯っぽく目を細めて、私の耳元で囁いた。
「じゃあ……話聞きながら、オナニーして」
「馬鹿言うなよ」
「嫌、して。いいでしょ?」
「お前がしてくれよ」
「いいわよ……でも、すごいベタベタしてる。シャワー、もう一回行かない?」
二人で再びシャワーを浴びながら、妻は私のものを優しく洗い、時折指先で先端を撫でながら、さらりと続けた。
「T君ね、こうして洗ってあげたら、二分くらいでイッちゃったのよ」
「一緒に風呂に入ったのか?」
「私が先に入ってたら、乱入してきたの。『一緒にいいだろ?』って」
「Fとも入ったのか?」
「Fさんとは、一回終わった後よ。あの人は本当に女を落とすプロね。私がお風呂から出て、パジャマ姿でいたら、
『いい匂いする』『吸い付かれそうな肌だ』って褒めながら、どんどんエッチな話に持ってくの。
私がテレビのリモコンを取ろうとお尻を向けた瞬間、いきなりあそこを手で撫でられて……
キャァーって叫んだら、すぐにキスされて。『やめて』って言ったら、意外と素直にやめてくれたの。
でもそのあと、『好きだ』『したい』って連発されて……私も、だんだんその気にさせられちゃって」
「されてもいいって思ったのか?」
「……おちんちんがビンビンに立ってて、これがまた大きいから。ああ、もうやられちゃうなって、覚悟した瞬間があった」
妻の手が、私のものをゆっくり上下に動かし始めた。
私は声を抑えながら、問いかけた。
「そのままそこで抱かれたのか?」
「膝の上に座らされて、しばらくお話してた」
「どんな話?」
「エッチな話」
「どんな?」
「今まで何人とエッチしたかとか、自分のチンポのどこが感じるかとか、私の性感帯はどこかとか……」
「それで、そのまましたのか?」
「ううん。私が触ってあげてたら、ガマン汁がいっぱい出てきて、私もすごく濡れてきて……お布団出してあげて」
「自分が抱かれるために、布団出したのか?」
妻は私の首筋に唇を寄せて、囁いた。
「ゾクゾクしてきた?おちんちん、すごく立ってるよ」
「それで?」
「これがまた、なかなか入れてくれないの。私を裸にして、先っぽだけあてがって、『旦那以外のおちんちんが欲しいって言え』って」
「言ったのか?」
「言わなきゃ生殺しよ」
「それで?」
「いやらしいことばっかり言うの」
「どんな?」
「『今から旦那以外のチンポが入る』とか、『俺のチンポの先から、奥さんの中に精液いっぱい出す』とか……」
「いやらしい気持ちになったのか?」
「当たり前でしょ」
「出されたいって思った?」
「それより、『早くして』って気持ちが勝っちゃった」
「入れられたら出されるって、わかってたんだろ?」
「生でしたら、出されるに決まってるでしょ」
「そういうとき、嫌だとか思わないのか?」
「……とうとうやられる、中に精液いっぱい出されるって思ったら、ちょっと……すごく興奮した」
「元カレにも中に出されたのか?」
「あの日はちょっと危険な日だったから……」
「どこに出したんだ?」
「口」
「顔射か?」
「うーん、中に出されそうになったから、急いで咥えてあげた」
「お前、俺のだって飲んでくれないくせに」
「飲んでないわよ、出させてあげただけ。でもチョー不味かった。アレだけは飲むのダメね」
「中に出されるのはいいのかよ?」
「中は……気持ちいいのよ。中で暖かいのがジワッジワッて広がってくるとき、ああ、やられちゃったって実感がすごくて……」
妻の手の動きが速くなった。
私は声を殺しながら、最後まで聞いた。
「Fとは何回したんだ?」
「3、4回かな……」
「そんなに……」
「四時くらいまでしたのに、起きたらもう私の股の間にいて。ボーっとしてるのに、30分くらいあそこを舐め続けるの。ちょっと気持ち悪かったけど……」
「でも結局、入れられたんだろ?」
「そうだけど……自分の精液がいっぱい入ってるあそこを舐めるのって、気持ち悪くないの?」
「俺は嫌だな」
「私も、自分の中に入ってたおちんちん舐めるのは好きじゃないかも」
「入れてもいい?」
「ダーメ。このまま出してみて。見ててあげるから」
妻は私の耳元で囁き続けた。
「ねぇ、どういう話に一番興奮するの?中に出されるところ?」
「まず……落とされる瞬間だな。『この人としてもいいかな』って思って身体を許すところ。
身体を触られたり、エッチな話聞きながら、自分で『この人のものを入れられてみたい』って思う瞬間。
それと、他の男のモノを入れられて悶え狂うお前の姿。
中に出されるのをわかっていながら、他の男に抱きついて、待ってる姿……それがたまらない」
妻はくすくす笑いながら、手を激しく動かした。
「ふーん……Fさんのおちんちん、すごかったよ。
あそこの中身、全部引きずり出されるかと思った。
時々抜いて、入れてくれないの。
『早く入れて』って10回言うまで入れてあげないって。
私、何叫んだかわからないくらい乱れちゃって……
イッたらFさん、『締まる締まる』って言いながら、急にあそこがコリッコリッてしてきて、引っ掛かりが良くなって……
ギューッて抱きしめられた瞬間、ジワァーッて熱いのが奥に広がって……
それでFさん、『痒くなる痒くなる』って言いながら、すごい勢いでこすってきて。あれ、病みつきになりそうだったのよ」
「あはは……とうとう出ちゃった。気持ち良かった?ちょっと待って、舐めてあげるね」
妻は跪いて、丁寧に私のものを口に含み、最後の一滴まで綺麗にしてくれた。
シャワーを浴びながら、私はついに聞いてしまった。
「お前……Fともう一回、してみたいんだろ?」
妻は目を細めて、微笑んだ。
「あなた、私がFさんとするとこ、見たいんでしょ?」
「……」
「今度、別の部屋に隠れて見てようか?」
私が言葉に詰まっていると、妻はさらに続けた。
「それよりさぁ……私がどこかのお店で、知らない人に口説き落とされるのを、他人のふりして見てるのはどう?」
その瞬間、とうとう妻に完全に主導権を取られてしまった。
でも、心の底では……
私はそれを、待ち望んでいたんだと思う。



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